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大好きな赤瀬川さん

赤瀬川さん追悼。

 

大好きな赤瀬川さん。

赤瀬川原平さん。

 

亡くなってしまいました。

10月26日。

 

赤瀬川さんは私の人生を変えてくれた人でした。

 

 

赤瀬川さんの本と出会ったのは高校生のとき。なんかの授業で必要になったのか、図書室に本を借りに行きました。

その頃私は町の風景に凝っていて、自分で絵にするためによくインスタントカメラを携えて町の風景を撮影しに行くのが習慣でした。

そんなだったので確か作品の参考にしようと写真集を借りに行ったのです。その時出会ったのが「香港頭上観察」でした。

パラパラッと本をめくり、なんとなく写真のたたずまいに惹かれその本を借りました。

 

教室の休み時間にまたパラパラめくり、写真の風景の向こうの世界を想像し、世界を旅行した気分に浸っておりました。

赤瀬川さんの目線と写真に添えられた短い文がまた格別の楽しさを醸し出していて。

 

「あ。なんかこの本好きだ。」

 

と、私はそう思いました。

返却期限が来てその本を返しに行きましたが、その本がまた本棚に並んだところを見たらまた借りて。その繰り返し。

一時期私の机には必ず赤瀬川さんの本がありました。

 

 

その本は当時高校生だった私には高くて買えませんでしたが(といっても3000円くらいですが。)いつか買ってやる!と思ってました。

 

そしてさらに強烈な出会いがありました。

その本を借りてしばらくして、高校の美術の先生が面白い本を持っているとウワサになりました。

「なになに?どんな本?」

「これだよこれ!」

そういって見せられたのが、赤瀬川さんの「新解さんの謎」でした。

 

あ。同じ人だ。

この人写真だけじゃなくて文も書いてるんだ。

あー、せっかくだから借りようかなあ。

じゃあ次私…。

 

 

そうして借りた新解さんが、私の価値観を粉砕したのです。

 

 

なんだこれ。

なんでもないと思ってた日常にこんな面白いもんが眠っていたのか?!

こんなもんがゴロゴロその辺に転がってんのか!

こんなに日常生活って見方を変えれば面白いのか!

 

当時私は今よりもよりファンタジーな世界観で物語を描いておりました。

日常生活なんてつまらないと思ってたのです。

 

戦争、いじめ、犯罪、競争。

人が人を殺し合い、蹴落とし合う世界。

この世なんてなんにもいいことなんてない。辛いことばかり。

なんでこんな世界に生まれちゃったのだろう。

呪文があって、唱えれば魔法が使えて、空が飛べるような世界がどうしてこの世にないのだろう。

もういやだ。いやだいやだこんな世界。

 

そのとき私はそう思っておりました。

 

けれど赤瀬川さんの本に出会って初めて、私は日常を「面白い」と感じるようになりました。

 

 

こんなに面白い世界があるんだ。

赤瀬川さんって、芸術家…?なんだ。

芸術…。芸術って、もっとふんぞり返ってて、やたらと「高尚」でわけわかんなくて、「わかってくれるやつだけわかっててくれればいい」って美術館の中でいばり散らしてるヤツだと思ってたけど(高校生の時の実感)、こんな芸術があるんだ。

芸術って、足元にもあるんだ!

足元に、こんな知らない面白い世界が在るんだ!

 

私もやってみたい。

 

その日から私の「芸術観」は大きく変わりました。

芸術を学ぶ高校に所属していたのですが、一般庶民的感覚の私にはどうにも自分とのとっかかりを見つけられなかった「芸術」というものを、初めて手につかんだ気がしました。

 

私の日常はまぶしく変わり、足元の世界…「エスムルブ」を描き始めるキッカケになりました。

 

赤瀬川さんの本は、「呪文」だったのです。

フツーの日々にも実は「魔法」があると。

 

それを唱えると、本当に魔法が起こって目の前のことが大きく変わってしまうと。

 

赤瀬川さんの本は私にとって偉大な魔法辞典でした。

 

 

それから時間が経っても、その想いは私の根底に在り続けました。

 

なんとなく本屋に入って見かけたら、そっと手に取ってコインと交換し、懐に温めておりました。

電車の中で読んではクスッと笑っておりました。

ものを考えるとき、文章を書くとき私の意識の根底には赤瀬川さんの文章がありました。

町を歩くとき、隠された魔法に目をこらすようになりました。

 

多くのものを失ってどん底に落ちた時も、それは底の方でじーっと眠って、そばにいてくれました。

気がつかないくらい私は赤瀬川さんの呪文に支えられておりました。

 

 

 あれから。

 

 

赤瀬川さんの呪文で、私はいつのまにかアーティストになってました。

 

 

人生を変えてくれてありがとうございました。

 

赤瀬川原平さん。

 

 

貴方はわたしの たったひとりの 最も敬愛する「芸術家」です。

 

 

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