2014年6月10日 カテゴリー:日記 コメント:コメント:0
「………。」
「………。」
「行ってしまったね。ワトソンくん。」
「ああ。案外、あっけないものだな。ホームズ君。」
「こんなにも早いなんて僕にも予想がつかなかったよ。」
「君、その瞬間見たのかい?」
「いいや。見れなかった。朝起きて、朝食をとっていつも通り見に行ったらもう居なかったんだ。
もぬけのからさ。
奴ら、巣立ったね。ついに。
でも、実を言うともうそろそろなんじゃないかって思ってたんだ。
昨日見たときもう体が成鳥の色をしていたし、体格も親鳥の3/4ほどに成長していた。
しかも、巣の中で羽ばたきの練習をしていたんだ。
もう古巣も狭そうだったし、これじゃあ巣から落ちちゃうな。と思ってたんだよ。
ほらこれ、昨日の写真だ。
何枚かあるよ。」
(パラッ)
「こっちは、親鳥と一緒のやつさ。ほら。」
「もう大きさがそんなに変わらないだろう?」
「うん。子どもの成長とは早いものだ。」
「まったくだ。本当に生まれてからきっかり2〜3週間だ。
巣立った瞬間は撮れなかったけど、巣立ったあとは撮れたぞ。そら。これだ。」
(ペラッ)
「はは、まだ羽がぼさぼさだなあ。本当にこれがあのヒナかい?」
「ああ。
何故なら、鳴き声がまだぎこちない。大人の鳴き方じゃないのさ。
飛び方も頼りないし、巣のあった木の周りを行ったり来たり飛ぶ練習をしている。
しかも、同じ所に20〜30分じっとしてる。大人のハトならそんなに長い事じっとしてるなんて稀さ。
だから、こいつがうちのハトだよ。」
「うちのって…。」
「なに、もう家族みたいなものさ。」
「もう1羽は?」
「うん。それが、もう1羽は威勢が良くて結構遠くまで飛んでったみたいなんだ。
写真に撮れたのはこいつだけなんだよ。
あ。巣は撤去しないでくれたまえ。
また依頼人が、使うかもしれないからね。」
「依頼人?
そういえば、巣立つまで守ってくれるよう頼んだ依頼人って…。」
「しっ。
ワトソンくん。ドアベルの音。
どうやら、また誰か僕に用があってきたみたいだね。
ほら、ちょっとそこのソファを片付けて!」
「ええっ、ちょっと!まだ話が…!」
(手帳からハラッと写真が落ちる)
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