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「ついにその時が来たね。ワトソンくん。」

「………。」

「………。」

「行ってしまったね。ワトソンくん。」

「ああ。案外、あっけないものだな。ホームズ君。」

「こんなにも早いなんて僕にも予想がつかなかったよ。」

「君、その瞬間見たのかい?」

「いいや。見れなかった。朝起きて、朝食をとっていつも通り見に行ったらもう居なかったんだ。

もぬけのからさ。

 

奴ら、巣立ったね。ついに。

 

でも、実を言うともうそろそろなんじゃないかって思ってたんだ。

昨日見たときもう体が成鳥の色をしていたし、体格も親鳥の3/4ほどに成長していた。

しかも、巣の中で羽ばたきの練習をしていたんだ。

もう古巣も狭そうだったし、これじゃあ巣から落ちちゃうな。と思ってたんだよ。

ほらこれ、昨日の写真だ。

何枚かあるよ。」

(パラッ)

ハト一家05

 

ハト一家04

 

「こっちは、親鳥と一緒のやつさ。ほら。」

 

ハト一家06

 

「もう大きさがそんなに変わらないだろう?」

「うん。子どもの成長とは早いものだ。」

「まったくだ。本当に生まれてからきっかり2〜3週間だ。

巣立った瞬間は撮れなかったけど、巣立ったあとは撮れたぞ。そら。これだ。」

(ペラッ)

ハト一家07

 

「はは、まだ羽がぼさぼさだなあ。本当にこれがあのヒナかい?」

「ああ。

何故なら、鳴き声がまだぎこちない。大人の鳴き方じゃないのさ。

飛び方も頼りないし、巣のあった木の周りを行ったり来たり飛ぶ練習をしている。

しかも、同じ所に20〜30分じっとしてる。大人のハトならそんなに長い事じっとしてるなんて稀さ。

だから、こいつがうちのハトだよ。」

「うちのって…。」

「なに、もう家族みたいなものさ。」

「もう1羽は?」

「うん。それが、もう1羽は威勢が良くて結構遠くまで飛んでったみたいなんだ。

写真に撮れたのはこいつだけなんだよ。

あ。巣は撤去しないでくれたまえ。

また依頼人が、使うかもしれないからね。」

「依頼人?

そういえば、巣立つまで守ってくれるよう頼んだ依頼人って…。」

「しっ。

ワトソンくん。ドアベルの音。

どうやら、また誰か僕に用があってきたみたいだね。

ほら、ちょっとそこのソファを片付けて!」

「ええっ、ちょっと!まだ話が…!」

 

(手帳からハラッと写真が落ちる)

 

ハト一家09

 

 

 

 

 

 

 

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